2012年06月27日(水) Vol.121 吉田雅彦(独立行政法人中小企業基盤整備機構)

震災復興の現場から

 中小機構の吉田です。 中小機構では、震災対応として仮設工場、仮設事
務所、仮設商店を整備して市町村に引き渡す事業を行っています。また、以
前から、街づくり・商店街の仕事もしています。
 写真は、4月27日に、宮城県南三陸町の仮設商店街に伺ったときのもので
す。後ろの高台に見えているのは、仮設住宅です。写真ではわかりませんが、
振り返ると、家々が土台を残してなくなっており、海が見えます。お店の前
のテーブルは、地元のお客さんが世間話をして帰る憩いのスペースです。
商店街の方々とお話しをしました。

宮城県南三陸町の仮設商店街

 「初めて、真っ暗な国道に、仮設商店街の灯りがともったときは、涙が出
た」こと。「やっぱり、仮設住宅で一日過ごすより、お店に出てやることが
あるというのはありがたい」こと。「東京や仙台や全国からボランティアや
観光で人が来てくれて、手伝ってもらったり、ものを買ってもらったりした」
こと。全国に海産加工品を売っているお店ががんばって地元のために稼いで
くれていること。仮設店舗に、看板をかけたり、ひさしを作ったり、自分た
ちで工夫をしたこと。津波で街がすっかり流されてしまい、海からも、国道
からも仮設商店街が目立つので立ち寄り客が多いこと。など、たいへんな苦
労があったに違いないのに、前を向いたお話しでした。
 今後は、役場の方で国道の道筋や都市計画が決まり、新しい町割りが決ま
っていくそうです。その中で、商店街としては、?今と同じように、国道か
ら店がすぐ見えるように配置してもらいたい。?今と同じように、国道から
車を商店街の駐車場に入れやすいように配置してもらいたい。?今と同じよ
うに、仮設住宅や居住地域から歩いてでも来られる場所に配置してもらいた
い。?今、仮設商店街に入っていない人で、入りたいと希望している人に入
ってもらいたい。ことを、新しい町割りの中で実現したいと考えているそう
です。

 地域振興といっても、地域の産業には3種類あると思います。
 ひとつは、地元商圏で生きる地元企業です。日本経済や地元経済の浮沈を
受け入れる立場で、地域経済の範囲で生き残れるか冷静に判断しなければな
らない企業群です。南三陸町の商店街では、被災前と比べると、「廃業が半
分、継続が半分。継続のうち、半分が仮設商店街に参加、半分が自宅で再開」
といった状況だそうです。
 二つ目は、東京・全国市場に販売する企業です。全国を相手に販売する地
元系企業が地域の経済と雇用の基礎になります。全国に付加価値を提供し、
見返りを地域にもたらす役回りです。国内観光客誘致も同じ効果があります。
南三陸町の商店街では、海産物の加工品(干物、レトルト、缶詰など)を東
京はじめ全国に売っているお店がありました。地元の海の幸を雇用や収入に
結び付ける大事な企業です。
 三つ目は、世界市場で生き残る日系グローバル企業です。世界に付加価値
を提供し、見返りを日本にもたらす役回りです。海外観光客誘致も同じ効果
があります。2011年は、宮城県、岩手県南部では、トヨタ系自動車工場の誘
致・操業開始や、東京エレクトロンの工場誘致・操業開始や、それに関連し
た動きがありました。これからの東北への関連企業の進出が期待されるだけ
でなく、今までに進出した情報系企業の自動車産業向けへの主力転換なども
見られます。

 仮設商店街のスポーツ用品店では、なぜか包丁が各種たくさん取りそろえ
られていました。「なぜ包丁ばかり、この品揃えですか?」と聞くと、「仮設
住宅でいろいろなものをいただいたので、ほとんど買わなくても生活を再
開できたのだけれども、いただいた包丁では、申し訳ないが、大きさも切れ
味も、魚をさばくには不足だったので、みなさん、包丁は買いに来たのです。
うちはスポーツ用品店なんだけど、頼まれて仕入れたらこんなになってしま
って」ということでした。
 きっと、地のもの、旬のものを、家庭伝承の料理法で食しているのでしょ
う。被害は甚大だったけれども、もともと豊かな幸に恵まれたところなのだ
なと実感しました。
 このような心豊かな地域、コミュニティが続いていってほしいと願います。

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