2011年11月16日(水) Vol.90 西村成弘(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス/関西大学)

異分野コミュニティの条件

 在外研究員として大学から派遣され、ロンドンに到着してもう少しで2か
月になる。この間、生活環境を整えるために奮闘してみたり、置き引きにあ
ったり備品が次々壊れたりと、短期間のうちにもいろいろなことがあった。
 少し落ち着いてきたところで、ふと次のように考えてみた。
 「KNSのような異分野コミュニティはロンドンに存在するのだろうか?」

西村成弘

 まだそういったコミュニティに出会えていない。しかしロンドンに来てみ
て「なぜ日本に、関西に異分野コミュニティがあるのか?」という問いもこ
たえられるべきではないかと思うに至った。答えはまだ出ていないが、関連
すると思われる事柄に関していくつか書いてみようと思う。

[グローバルシティ・ロンドン]
 ロンドンに来る前から気になっていたのは、「ロンドンで電話を引くのは
たいへん」という情報だった。携帯電話はすぐに契約できて通話できるよう
になったが、やはり家に電話回線を引いてWebにつながらないと公私とも
に何かと不便である。蛮勇をふるいBT(ブリティッシュ・テレコム)に電
話をしたのが、案の定たいへんだった。何がたいへんだったかというと、相
手の英語の訛りがきつすぎて聞き取れないのである。また別の機会には、頼
んでおいた小切手帳がなかなか送られてこないので銀行に電話したのだが、
訛りがきつくて何度も聞き直し、「ごめん、すぐ送る」といってもらうのに40
分くらいかかった。
 ロンドン人の訛りがきついのは、移民がたくさんいるからである。という
か、感覚的には人口の半分以上は移民である。インド、パキスタン、アフガ
ニスタン、アラブ諸国、アフリカ諸国、ポーランド、中国などなど。そして
みんな一応英語を話すのだが、母国語も忘れていない。ロンドンにはそれぞ
れの出身国のコミュニティがあるからだ。地下鉄の車内ではいろんな国の言
葉が飛び交っている。しかし、エスニシティに基づいたコミュニティを超え
た何かしらのコミュニティがあるかどうかは、まだわからない。

[ロンドンの大学]
 ロンドンでは毎日大学に行って研究室で過ごしているが、最近は留学生(学
部学生)のための英語補習クラスに出席し、スペイン、デンマーク、中国か
らの留学生と勉強している。小ぢんまりとしたクラスだが、先生は頻繁に学
生に質問し発言を促す。そして彼・彼女らはそれに対して積極的に発言する
(ここは日本の学生と大いに違う)。LSE(うちの大学の略称)に留学して
きている学生はどこの国の学生であってもよく話したがり、先生とも友人と
もコミュニケーションをとりたがる。世界中から学生の集まるLSEはひと
つのおもしろいコミュニティなのだが、ロンドンにあるコミュニティとして
とらえるには問題がある。それは彼らがロンドンにとどまらず出身国に戻っ
て要職に就くことだ。しかしそうなってからもコミュニケートしつづけ、卒
業生のコミュニティを形成し世界を引っ張っていっているところは面白いか
もしれない。

[ロンドンのスピード]
 ロンドンで生活してみると、耐久消費財やサービスの供給のされ方の点で
日本とだいぶ違うことがわかってくる。コミュニティとはあまり関係ないか
もしれないが、ロンドンのビジネスはゆっくりしているのだ。
 住み始めてから2か月もたっていないのに、これまでに洗濯機が2回壊れ
た(ドイツ・ボッシュ社製)。大家さんに頼んで修理業者をよこしてもらっ
たが「部品をドイツから取り寄せるので、時間がかかる」とのこと。そして
今日でもう3週間も待っている。
 次に郵便事情。郵便や小包配達はちゃんとしてくれるのだが、不在だった
時の対応が日本とだいぶ違う。日本なら不在票にあるドライバーの携帯電話
に電話したらその日中に届けてくれることもあるが、ロンドンでそれは無理。
連絡先にコンタクトして再配達を依頼するのだが、再配達日は翌々日からし
か指定できない。局や集配所に取りに行くときは「24時間、時間をくださ
い」と書かれている。手続きをキチンキチンと処理するのがロンドン流らし
いが、ビジネスのスピードは、日本人からすると、とろすぎる感がある。こ
れはビジネスだけではなく、ロンドン人の行動様式にも通ずるものがあると
思う。

 どういった条件がそろえば異分野コミュニティが活発化し社会にプラスの
貢献をするのか。おそらく人々の政治参加のカタチや社会保障の在り方など
いくつも要因がありそうだが、ともかく日常気づいたところから観察してい
こうと思う。

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