2011年11月09日(水) Vol.89 堀登志子(商業活性化アドバイザー/日本笑い学会理事)

笑ってまちおこし 大和郡山編

 落語のまち池田で関わる「おたなKAIWAI」を縁に、大和郡山のやなぎま
ち商店街にも入らせてもらっている。「笑いでつながった縁」だ。落語好き
の友人が寄席をのぞき、まちめぐりツァーに参加し、自分とこの商店街もこ
んな楽しいことしたいと相談してくれたのが去年の事。

堀登志子

 近鉄郡山駅を降りてしばらく歩くとたどりつく南北にのびる600mほどの
商店街。城下町。豊臣秀長が納めた時代、商工業保護の政策として同業者を
一地区に集め営業上の独占権を与えた「箱本制度」とを敷いた。この特権を
書き記した文書を御朱印箱と呼ばれる箱に納め、封印をして一ヶ月交代で「内
町十三町」と呼ばれる13の町の中で持ち回ったという制度。会議の中でそ
んな歴史を教えてもらった。その中の柳町と称されたのが、今回のやなぎま
ち商店街。 旧い商店街でその頃から商売をしている店もあるほど。創業100
年なんて当たり前みたいにある。「今の店は安政の大地震で建替えたはず」
「いやその前じゃないかと」なんて会話が普通にでるから驚き。「決まり」
や「日常」も引き継がれている。件の御朱印箱が少し前まで廻ってたらしい。
少し前?第二次世界大戦の前とか・・。住んでいる環境で時間の感覚って変
わるんだ。
 ゆったり時間の流れる商店街だが、時代は待ってくれはしない。シャッタ
ーをおろして中で住み続けている店はまだいい。普通の住宅に建替えたり、
空き地にしてしまったり、マンションになったり。すでに城に近い北端は商
店街の体を成さない。10年前、歩くだけでも楽しかった旧い街並が壊れて
いっている。古都奈良の中で、近世の香を残す街並は充分に人を寄せる力が
あるのに、それが商店街に住んでいる人の手によって失われていく。城に近
い北側には大きな介護付きマンションが建ってしまった。二百坪からあった
筆屋さんは廃業し更地になってしまった。南はまだなんとか建物が残ってい
る。商店街に軒を列ねる常福寺と郡山八幡神社が守っているのかも知れない。
 この商店街。こんな状況なんだが、イベントはさかんである。理事がよく
動く。イベントを自ら企画し仕切りやってしまう。やってしまうんだけど、
イベントにかかりきりで店はそのままに。おかしいよね。もっと自分の足下
を見ようよ。といいたくて…

 「十年後のやなぎまち商店街をみつけて、目標にきめて、それをキャッチ
フレーズにしましょう」と打ち出す。やなぎまち∞なんとか志隊の立ち上げ
だ。まずは「ええとこさがし」。自分達の拠ってたつ商店街のええとこを探
す。まちのボランティアガイドさんに案内してもらう。KNSまちづくり研
究会にも来て頂いた。一緒にお酒も飲んでもらった。躊躇せず「ここがええ
とこや」と見つめる言えるようになっていく。

 そこで生まれたキャッチフレーズが「神に守られた柳のまち」。南端に位
置する郡山八幡神社が自分達の誇りだと。一緒に今一度のにぎわいをつくろ
う。まちの人に拠ってもらえる場をつくっていこうと。お客さんは来ないん
じゃない。来ても楽しくないから足を止めないし向けないんだ。買物してく
れなくても、とにかくここに来てもらおう。車がびゅんびゅん通るけど、店
の中に椅子をおいてゆっくりしてもらおう。神社で子供達に遊んでもらおう。
お店の人はみんな話好きだ。長年の商売の積み重ね、語るおもてなしのレベ
ルは高い。それも自分達の武器だよね。と気づいていく。

 マップをつくった。マップには、各店のキャッチフレーズが載っている。
例えば本家菊屋は「秀吉が愛でた菓子の神」、島岡輪業は「輪っかの神」、
大門湯は「心と体をほぐす湯の神」。どの店も郡山八幡神社の大きな神様が、
まちのひとの幸せのためにつかわした小さな神様が開かせた店という設定。
一年かかってつくりあげたこの物語。今年の三月に、郡山八幡神社でお祓い
をしてもらったそれぞれの神様の札を、手作りの箱(祠型)にいれて、各店頭
にかかげることにした。イベントではなく、きちんと神社に店主達がお参り
し、お祓いをうけた。お礼に豊来家玉之助さんの太神楽を奉納し、その後は
各店を獅子舞で寿いで歩いてもらった。まずは商店街のみんなで楽しもうと
いうスタート。雨だったけど、一件一件店を訪ねる獅子に、皆さん喜んでく
ださった。イベントと言うと店を出払って汗を流していた店主が、店で迎え
る立場を楽しんでくれた。まずは楽しまないと。イベントやってる最中にひ
っちゃきになって運営側に廻っているのっておかしい。店主はお客さんと心
を同じにしないとね。

 キャラクターもいる「柳神くん」。先月は柳神くんをプリントしたショッ
プカードをみんなでつくった。ポップもつくる。コピーして切ってパウチし
て、皆手作りだ。一緒によって会議室でわいわい言いながら作業する。知恵
も出して、安くで仕上げる。さすがに商売人だ。皆で楽しくなにかをする。
商店街活動の基本をみんなで今一度噛み締める。そう・・こんなことができ
るのも、この商店街の「ええとこ」なんだ。って言葉にだしてお伝えする。
これが私の役目。「ええとこ」を自覚して自信にして楽しんでもらう。でな
いと日々が続かない。

 「一日のイベントに十万人集まるより、毎日十人お客さんが買物する店に、
そんな店秤の商店街にしましょ」とお話する。これは賛同してもらえる。そ
うなるために、イベントはどうしたらいいのと考える。なにが今足りないか
気がつきだす。

 やなぎまち∞なんとか志隊。毎月会議をしている。机をとっぱらっての膝
突き合わせての車座会議。理事店だけではない。軒を並べる映画制作会社の
人もやってくる。郡山八幡神社の宮司さんも参加する。楽しく和気藹々と。
今度の会議では「柳神くんストーリー」を皆で一話ずつ考えてくることにな
っている。出席者が減るかも知れない・・とちょっと不安ではあるが、楽し
みだ。

 楽しんで仕掛けていく、この姿勢。そこでずっと暮らしていかねばならな
い店主には大切なこと。楽しむ先には「笑い」がある。笑うところに人は集
まる。にぎわいの空気が生まれる。楽しんで笑って仕掛けていく限り、きっ
と十年後にはにぎわいがやってくるはずだ。
 11月19日10時から、やなぎまち商店街で「第一回柳神くん祭」を開催
する。餅搗きにふるまい善哉に太神楽を人の少ない南端、郡山八幡神社の参
道で展開。各店には、店頭でなにか「小さなイベント」か「小さなおもてな
し」をとお願いしている。北から南へ歩いてもらおうとスタンプラリーも計
画した。「きっと半分くらいしか協力しないよね」といってたスタンプラリ
ー。なんと夕方からしかあかない銭湯と呉服屋一軒のぞく、全店が参加する
という。「びっくり・・」とイベント隊長が報告してきた。びっくりじゃな
いんだ。楽しそうにやってる姿が心をほぐしたんだ。きっと。

 まさに「笑う門には福来る」 まちおこしは笑ってやらなくちゃ。

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