2011年07月13日(水) Vol.72 堀登志子(商業活性化アドバイザー・日本笑い学会理事)

笑いの力は無限大

◇日本笑い学会という学会がある。
 千人を会員に抱く真面目な学会だ。
真面目すぎて・・ちょっと首をかしげるときもある。
「笑いとは」「笑いを測定するには」としかめっ面で悩んでいることも多いのだから。
 でも理論をこねくり廻しているのは、どちらかというと学者先生達。
大学教授や、大会社のえらいさんで片手で笑い学の研究している人や。
実践肌ではなく、理論派。こんな人たちの研究や分析に支えられて、
「笑い」が、大学の授業にとりいれられようともしている。
去年新設した関西大学堺キャンパスには、「笑い学部」が創設されるはずだった(らしい)。
日本初・・いや日本発になったであろう学問だ。
ところが、中心であった関西大学教授木村洋一先生がお亡くなりになり、頓挫。
結局、「笑い学部」で申請されたものの文部科学省の認可がおりず、
人間健康学部になってまった。
未だに「笑い=不真面目」という感覚が日本人からは抜けないようだ。

堀登志子

◇年に一度「学会」が開催される。
 今年は7月23日24日、件の関西大学堺キャンパスだ。学会なので、エ
ントリーしたものが、次から次へと研究発表やワークショップでプレゼ
ンテーションをおこなう。持ち時間は20分。KNSよりゆったりしている
(笑)。ほとんどの人は、この20分の間にどれだけきちんと研究成果を伝
えるかに注力するのだが、なかには「いかに笑いをとるか」に注力する
輩もいる。仲間と徒党を組んで参加する私もだ。シナリオをつくり、衣
装にこり、練習し。とにかくどれだけ笑いがとれたかを競う。密かに・
・。この下心を見抜いた人もいて、後から「理論もなにもない笑いに走
った発表」とけちょんけちょんにいわれた事もあった。するどい・・も
ちろん彼女は理論派である。
 
◇理論派にたいして、実践派もいる。
 日常生活で、特に仕事で、「笑い」「笑う力」を武器に活動をしている
人間達だ。「落語」を商業活性に役立てたり、「笑う力で…」「笑ってま
ちおこし」なんてテーマで講演活動をしている私もその一員。でももっ
と切実な場面で使っているのが、医者や、看護士、ヘルパーなどの医療
関係者。特に多いのが、子供や高齢者を相手にする現場の人々。心をひ
らいてもらわないと、どんな医療も薬も効果を発揮できないそうだ。お
びえている子供を先ず笑わせてほぐす、気力を失っている高齢者をにこ
りとさせて心を開かせる。長期入院の患者や、ホスピスの子供達、ほん
とうに辛い人たちが集まっているところ。そこで「笑い」が大きな力が
持つ事を、彼等は体感している。毎回の学会ではその体感を発表しても
らえる。「笑いの力」のすさまじい底力をかいまみることができる。笑
うことは心身をほぐすし、笑わせようという気持ちは気力の現れだ。笑
う事でNK細胞が活性化し癌細胞が減るという研究成果もある。「笑うこ
と」「笑わせる事」、この体感によって生きる姿勢が変わる事、これがな
によりも大切な事なのだろう。特に人に笑ってもらう=人を笑わせると、
生きる姿勢や視線が変わる。私自身もそれは体感するところだ。

◇笑いで変わった歯医者がいる。
 私がたずさわっている中心市街地商業活性化の活動「池田市落語一店
一席おたなKAIWAI」。(すでにこの件は、2月のコラムで書かせて頂いた)
その活動の中にも、「笑わせること」で自らの視線を変えたある歯科医
がいる。その話を紹介させて頂きたい。
 三代続くまちの名士。本町通のこいし歯科。おじいちゃんの代の頃は、
待合室に火鉢があって、近所の人がよってきていたらしい。用もないの
に!阪神大震災を機に新しい建物となった。バーのような待合室になり、
雰囲気もとても良くなった(と孫先生はいっている)。歯科は予防治療が
本来、だから歯が痛くなる前に気楽に歯医者に来て欲しい。そんな気持
ちが待合室の雰囲気にもこだわったのだろう。他にも様々な試みを去れ
ている。マタニティ教室?子で歯磨教室。小学校にもお話にいったりし
ている。かっこいい先生なので、学校は人気者だ。女子達がまとわりつ
く(らしい)。けれどそれと歯医者の評価は別。怖い歯医者のイメージは
拭えない。「いきたくないところ」ランキング一位である。

◇発端は「歯医者は怖くない」と思って欲しいの心。
 そこで先生は考えた「落語会なら来てくれるかな」と。二年前におた
なKAIWAIに参画し、手水寄席を隔月で開催しはじめた。歯医者の怖いイ
メージを払拭する。歯医者に気軽にきてもらうことが目的である。先生
のかっこいい魅力と気さくな看護士さんの勧誘も効を成し、今では毎回
満杯の人気落語会である。落語会は、落語一席の後、先生が「歯磨噺」
の二部構成。これはずっと変わらない。お話するのが元々好きな先生で
ある。隔月とはいえ、自らの落語会での舞台。落語に負けない笑いをと
りにいきたい。何時の日かそんな野望が胸に沸き起こる。「ユーモア実
践道場(笑いプロジェクト主催)」に通って御稽古を積む。少し笑っても
らえるようになる。もっと笑ってもらいたいと思い、まずは姿からと着
物を買う。提灯や幟を設える。型からだ。

◇笑わせることの満足感
 そんなことをしている内に、笑ってもらって心地よくなっている自分
に気づく。舞台にあがると皆が注目し、笑いを期待している、目論んだ
通り笑ってもらう、嬉しい。こんな気持ちに気づいていく。笑ってもら
えた時、相手からの「笑わせてくれてありがとう」オーラを感じるのだ。
患者と先生の関係から、「笑ってもらった 笑わせてもろた」の関係が
生まれる。笑い声を媒体にしたコミュニケーションが生まれる。それま
で口も聞いた事のなかった近所の介護施設の高齢者が、「先生ありがと
う」と声をかけて帰っていく。ずっと通っている小学生が、落語を学び、
「先生落語できるようになった」と報告にやってくる。ちなみにこの小
学生は、小学亭牛乳瓶と芸名をもって手水寄席の舞台にあがった。

◇笑いで視線が変わる。
 この関係、もっと周りにも拡げたいと感じるようになる。視線の拡大
だ。自分の歯科に来て欲しいと始めた落語会。笑う事で笑ってもらう事
で、こんなによい関係がうまれるなら、自分の拠って立つところ、まち
にも拡げていきたい。近隣の商店も「笑いの力」をつかって、お客さん
とよい関係をもってもらえるようになりたい。笑いでもってにぎわいが
生まれて欲しいと思うようになる。視線の変換である。
 今春から、近隣の店とコラボして、手水寄席開催日限定のスタンプラ
リーを試みた。寄席の中でも参加店を紹介する。寄席の後は、お客さん
に声をかけて一緒に巡る。「先生つれてってな」とおばあちゃん大喜び
である。コラボした店は、「来てくれてありがとう」と、これまた大喜
びでお客さんと相対する。商店街組織や町内会組織を越えた、新しい関
係が生まれつつある。

◇笑いの力は無限大
 笑いの力は無限大だ。理屈ではなく、人間関係や拠って立つところの
意味を体感させ、人を変えていく。私も「笑いの力」で視線が変わり世
界が変わった。残念ながらまだまだ修行中の身ではあるが。人を変え、
関係を変え、まちを変えていく笑いの力。

 さぁ…今日も!笑って元気にがんばりまっしょい!

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