2011年02月09日(水) Vol.51 堀登志子(商業活性化アドバイザー/日本笑い学会理事)

笑ってまちおこし

 ひょんなことからかかわった「落語のまち池田」をキャッチフレーズにかかげた大
阪府池田市のまちおこし。この事業「落語一店一席おたなKAIWAI」と言う。最初は
「寄席やって人を集めるなんて商業活性にならない」なんて言われてた。 「そんな
ことより店が独自にもてなしの心をもって・・」とも。ところがだ・・今や市場や商
店街のならず、個店や歯医者でも寄席をやっていたり、やろうかな・・なんて考えて
いる。私がではない、商店主自らその気になっているのである。

堀登志子

 なぜ彼等が「寄席をやりたい」と言うのか。寄席で生まれる「笑い声がにぎわって
いるような空気をつくる」ことを目の当たりにし、「笑い声が人を寄せる」ことに気
付いたからである。もちろん・・一人芸の落語が意外に費用や設備のかからないこと、
落語にこだわらなくても色々な笑い声をつくりだす企画があることを知ったことも大
きい。そう・・笑わせることに創意工夫は必要なれど、費用や設備はいらないものな
のである。そこに必要なのは「相手を笑わせたい」という心と、自分も楽しむ「思い
きり」。
 商店主がそれに築くまでに2年と言う月日が必要だった。
 この「落語一店一席おたなKAIWAI」、2008年3月に旗揚げした。以来毎月「おたな
の日」と称してイベントをやっている。この月次寄席の宣伝隊や演者は近隣大学落語
研究部員または卒業生で構成している。宣伝隊が最初に遭遇した問題は、「日曜日の
商店街、チラシをまく相手がいない」ということだった。それほど閑散としているの
である。それでも楽しい声を自らがあげる。すると日頃閑散としている商店街に彼等
の楽しい声が拡がる。必死になって集めたお客が座る寄席会場からは笑い声が漏れて
くる。この楽し気な声と笑い声が、にぎわっているような空気をかもし、道ゆく人の
足をとめる。入ってみる。笑う。さらに大きくなった笑い声が人の足をとめる。その
うちに宣伝隊の陽気な声がまちの人の心をほぐし、徐々に寄席のお客も増えてくる。
そんなお客にひっぱられるようにして、少しずつ商店街を歩く人も増える。宣伝隊や
寄席会場の笑い声とあいまって、あたかも「にぎわっているような空気」が生まれる。
この空気こそ、商店主達がのぞんでいたもののようだ。
 もちろん寄席で商店街が活気づく訳ではない。が、楽しい声や笑い声が「にぎわっ
ているかような空気」を生む。商売人達は、この空気を敏感に感じ取り、自分達の集
客やおもてなしの手段に使おうと画策する。
 市場での寄席は、落語一題に各店の蘊蓄&試食三昧を企画した。駅下商店街では腹
話術やマジックといった立ち芸で寄席をやったり獅子舞の練り歩きを、歯医者では落
語&歯磨噺を。寄席=落語にとらわれたりしない。場に応じてオリジナルな形を追求
している。
 どの寄席でも、商売人達が舞台に立つ機会をつくる。試食を運んでくるだけでも良
い、歯医者先生が真剣に半時間お話するのもいい。形はなんだっていいのである。よ
うは商売人達が自ら舞台に立って、「笑わせてもらいにきたお客さま」に対峙するこ
と。商売人達は「どうしたらお客さまを笑わせられるか」と頭をひねる。芸人ではな
いのだから芸で笑わせても意味はない。自分達のもっている技で、お客さまを笑顔に
するのである。「自分がお客さまを笑顔にできるものはなんだ」と真剣に考える。ま
さに舞台の上での真剣勝負だ。
 この真剣勝負は、かならずやお客さまに伝わる。心に響く。「笑わせてもらおう」
と心を開き、そこに信頼関係が生まれる。この新たな関係こそが顧客を育み、再来者
を増やし、まさに活気のある店、店を基点とした市場や商店街をつくっていく。
 これが拡がり繋がり面となる。これこそがまさに生きたまちおこしではないか…と、
笑いの力を信じる私は、今日も商店街を市場を駆け回っている。

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