2010年06月16日(水) Vol.19 西村成弘(KNS世話人(関西大学商学部))

教育問題に寄せて

去る5月29日の定例会のKNSカフェのテーマに「社会に役立つ学生の育て方」というものがあったが,
教育というものは,じつに難しいものだなあと思う。
僕は大学で研究活動・教育活動に携わっているが,結局できることといったら,
自分がどういった成長過程をたどってきたのかを振り返り,それをもとに学生と対話することくらいではないかと思う。

僕の成長過程はどのようだったか。恥ずかしながら,ちょっと過去を振り返ってみたいと思う。

幼稚園の頃…ほとんど記憶にない。
唯一記憶があるのは,ある日の給食の時間に同じ組のS君が早弁をしていたこと(配られたとたんに食べていた)。
子供心に衝撃を受けた。なんちゅう世の中だ,と。

小学生の頃…記憶にあるのは,休み時間にカエルを捕まえにいったこと,
なんとかしてカラスを生け捕りにしようとがんばったこと,
土日に「昆虫を捕まえてきなさい」という宿題が出ていたことをすっかり忘れ,
月曜日の朝に急いで裏の畑から毛虫を捕まえ学校に持参したこと。
「これが毛虫です。裏の畑で悪事を働いています」と発表し,ウケることは快感であるということに気づく。

中学校の頃…勉強が飛びぬけてできたわけではなかった。
友達と英語の点数を賭け,負けたら頭を差分だけ“しばく”というゲームをする。
これで頭がよくなったか悪くなったかどうかは,不明。

高校生の頃…クラブ活動で流星の観測をする。
観測結果を勝手な課題設定と解釈でもってまとめ,アマチュア天文学会で発表する。
ここで研究することの面白さに気づく。
しかし満点の星空を見ていたらなんだかむなしくなって,理学部に行かず経済学部へ進学する。

大学生の頃…大学に入ってようやく「本は面白い」ということを発見し「本を読む習慣」がつく。
最初は阿刀田高から。じつはそれまでほとんど本を読まなかった。
「これまでに読んだ本で一番記憶に残っているもの」を問われると非常に困った。
というのも,その答えが幼稚園から小学校時代に寝る前におばあちゃんに読んでもらった
「ブレーメンの音楽隊」(絵本!)だったから。
嗚呼,はずかしい。しかし「本は面白い」ということを知った後は,どんどんいろんな本を読むようになる。
そして大学院へ行ってしまう。

大学院時代…ここでも変化が。じつは大学時代まで,歴史がそれほど好きではなかった。いや,苦手だった。
というのも,歴史の教科書を読んでいてもすぐに疑問がわいて,それがひっかかって前に進めないから。
たとえば,平安時代の人たちは,何が楽しくて生きていたのだろう,生きがいはなんだったのだろうか,
とついつい考えてしまう。
しかし,院生の頃には「そういうことを考えて調べるのが楽しい」ということに気づく。
そして歴史が好きになる(注:私の専門は経営史です)。

これまでの経験を振り返って,僕がいちばん言いたいいことは,成長には「気づき」が大きく関係しているということ,
そして「気づき」はいつやってくるかわからない,ということだ。

早い遅いがある。僕はかなり遅いほうだ。早い人なら,小学校時代に本の面白さにも気づく。
しかし,小学校や高校のころに本を読む面白さに気付かないといって,それがダメなわけではなかった。
僕は,気付かなかった。高校の時に歴史が好きで大学でも歴史の勉強をする。これが理想的な形かもしれない。
しかし,僕はそうではなかった。苦手だった。だからといって,すぐに落ち込んだりあきらめたりはしなかった。
いつか分かるときがくると思っていた。両親や周りの先生も,ゆっくり待ってくれた。そして,気付いた。

学業を終え社会に出ていく年齢は,画一的に決まっている。大卒の場合は22歳か23歳だ。
しかし,その年齢までに多くのことを「気づけ」とプレッシャーをかけても,みんながみんな気づくわけではない。
もうちょっと余裕をもって見守り,待ってやらねばならないのでは,と思っている。

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