2022年08月24日(水) Vol.621 杉浦美紀彦(兵庫県 阪神南県民センター)

Mさんへの返信・・・「最後の岩山アタック」から

 久しぶりだけど元気にしてるかな。こうしてメールするのも久しぶりだけれども、最後にあったのはいつだろうね。数年前に皆で白山に登ったときかな。最終日にの下山途中に、A隊員と一緒に、何故か突然体操を始めた姿が印象に残っています。数年前のことといっても、コロナのおかげで、山に登りに行くのも控えて、先日六甲山へ行ったのがほぼ3年ぶりなのだから、かなり前なのは推してしるべしかな。
 山へ登るのを控えたのは、膝を痛めたこともあってというか、そちらの方が要因としては大きいのですよ。こんな風に身体が足を引っ張るのは、まもなく還暦を迎えるのだから当たり前と言えば当たり前。だいたい50歳ぐらいから、必ず身体のどこかしらが痛んでいるような気もするし。君も左膝と両肩と腰と痛めているとなると、なかなか大変だね。ただ、僕は、なんとかなるんじゃないかと思っています。少しずつ回復はしてきていることもあるけど、多少の不具合はあっても誤魔化し誤魔化ししながら山に登っている、そんな先輩の姿を見ているので。

杉浦美紀彦

僕が東京の社会人山岳会に入っていることは知っているね。28歳の時に入会して、その後、関西に転職してからも、そのまま幽霊部員のように籍だけ置いているのだけれども、ときたま長野県あたりで皆が山行するとなると顔を出したりするので、まあ、なんだか変な存在として認められている感じかな。改めて考えると、困った存在で、よく許されているなあと思います。たまにしか出会わないせいか、なつかしさが上回るからかもね。思えば、僕はいろいろなところでいろいろな先輩にかわいがられてきました。
 その山岳会には、幅広い年代の方がいらっしゃってね。もとより、私自身はハードな山行をするわけではないのだけれど、初めての雪山山行のとき、20歳ぐらい上のB先輩と一緒に行動して、こちらとしては、他はともかく、少なくとも体力は上回っているだろうと思っていたら、まったく敵わなかったのを覚えています。(その後20年経っても、CさんやDさんに、そう感じさせられる場面もあったのだけれども)今、考えると、そうしたいろいろな年代の方と仲間になれたことは良かったなと思います。特に20歳以上も上の先輩方の姿は、印象的ですね。いろいろ教わるのは、技術的なことにしろ、テント生活の過ごし方にせよ、同年代や数歳年長の先輩方からの方が多かったのだけれど、その先輩方に「あの歩き方には敵わない」と言わしめるEさん。口数も少なく、ひょうひょうとした感じながら、適度に私を導き、あるいは追い詰めるBさん。逆に私を気遣って何かと声を掛けていただけるDさんやFさん。皆が強風で動けなくなっているときに、這いつくばって偵察を行い、ルートを指示するGさん。膝痛が持病のはずなのに、休憩時に重いフルーツの缶詰を差し出すかと思うと、雪山で私を追い抜いていくHさん。「先に行け」と言いつつ、いつのまにか追いついて「遅いわね」と言わんばかりのIさん。朝、テントから這い出て、歯磨き代わりにウイスキーを口にするJさん。そうした姿が目に浮かびますが、さらにその先輩方がいざというときに見せるチームワークには魅せられました。
こんな風に私がまったくかなわなかったときから(もちろん、その時が第一線ではなくて、それぞれ若い頃の武勇伝はお持ちです。特にKさんなど。)、逆にふとした仕草に体力の衰えを感じさせられたり、予想に反して楽なコースを選んだり、いろいろな姿を見せていただくようになりました。でも、これはじつは本当に運が良いことなんだと思っています。ある時気付いたのですが、こんな風に年を取っていけば良いのだよと、教えてもらっているのですね。そんな安心感を私に与えてくれています。
で、その先輩方は衰えるばかりではありません。ほとんどの方が現役なわけですから、満身創痍のはずなのに、楽しそうに山を登る、負けん気を見せる。そんな姿を見せられると、逆にこちらが老け込んでいられない、と思わされることの方が多いです。
ちなみにその山岳会の最高齢の方は87歳ぐらいです。20年くらい前に、長野県でA隊員たちにクロスカントリースキーを指導してくださったLさんですね。その方が2年前に、最後の岩山にアタックしたそうです。少し長いですが、その時の山岳会の記事を引用しましょう。
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 「今度の山行は『鹿沼岩山』と聞き、不参加としたが、自分では最後の岩山歩きのチャンスかと思い、しかもあの一番岩を懸垂で下りる魅力に誘われて是非参加したいと考えた。そこで以下のメールを送った。
『参加したいのですが、85才の身でしかも岩場は10年以上離れていて、腹部に人工物が出張る障害者なのでハーネスも腰縄も付けられません。そこで、自分なりの方法はないかと考え・・・<中略>・・・その結果、当日午前に1?2回懸垂下降の練習をさせてもらえば何とかいけるのではと思いました。』
・・・<中略>・・・
当日は体調を整えて勇躍参加した。2時間余の岩場歩きは久しぶりに履いた皮登山靴の重みと足の疲れでかなりの負担であったが、何とか目標の一番岩に到着すると、眼前の高度50m以上の垂直近い岩場に心躍るばかりであった。私は先行してもらった経験豊富な3人に声掛けしてもらいながら慎重に下った。3段に分かれる岩場の1?2段は順調だったが、3段目は岩が濡れていて革靴が滑り難渋した。予定どおり相当な時間を要したが、満足感でいっぱいだった。皆さんの大きなご支援のお陰で最後の岩歩きが楽しくできて感謝・感謝です。やっぱり山はいいな?。山仲間はいいな?』
―――
ね、負けてられないでしょう。(まだまだ先輩に叱咤激励されて、感謝・感謝です。)

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