2021年12月15日(水) Vol.589 土屋武大(在インド日本大使館(経済産業省から出向))

三度目の海外赴任はインドで

 前回は2018年11月28日、Vol.438で登場させていただきました土屋 武大です。その際には、「二度目の海外赴任はベトナムで」と題して寄稿させていただきましたが、まさかその3年後、インドから寄稿することになるとは夢にも思いませんでした。このような機会を再度いただき、堂野様をはじめ、KNSの皆様には感謝申し上げます。
 (前回のURL)http://www.kns.gr.jp/column/1949.html

2018年6月に始まったベトナム生活は、自分にとってあらゆる面(仕事も趣味である剣道も)で性に合っており、任期延長を希望していたのですが、本年2月にインド赴任の内示をいただいた時には、本当に驚きました。驚いた理由は、連続での海外赴任もさることながら、2007年6月にインドネシアに赴任する前に、とある先輩から「土屋、アジアで難しい国って3つあるんだけど知っているか?君が行くインドネシア、ベトナム、そしてインドだよ。」というお話しをいただいたことがあったからです。

土屋武大

これでインド赴任をすれば「グランドスラム達成だ!!」という思いが真っ先に頭をよぎるととともに、自分のこれまでのキャリア及び適性を考えると、現場での業務(海外進出している日本企業の皆様の事業活動支援、そして相手国政府の法令や組織を紐解きながらの交流や交渉)に邁進した方が合っていると思い、インド赴任を決めました。

 名残惜しさとともにベトナム・ハノイを本年6月3日に離任した後、日本で赴任準備等をさせていただき、本年9月3日、インドの首都、ニューデリーに赴任しました。ちょうどその時は東京のコロナ感染が厳しい状況だった時でしたので、出国前72時間前のPCR検査の陰性証明書がインド入国時に必要なのですが、「陽性だったらどうしよう。」と心の中でドキドキしていたことは覚えています。(因みに、ベトナムは離任時には感染状況が悪化し始めた時でしたが、ベトナム政府はしっかりとした感染対策を昨年来から講じていたこと、自分でも対策をしっかりしていたと自負していたことから、日本帰国時には陰性の自信があったくらいでした。)

 インドは、この4月から5月にかけてコロナ第二波が発生し、大変多くの方がお亡くなりになり、その時には推計で日本人駐在員の7-8割が日本に退避されましたとのことです。この時、日本の報道でも、インドでは亡くなった方の数の多さから火葬場のキャパシティを超え、公園等を臨時の火葬場とした映像が流れたことを記憶している方も多いと思います。しかしながら、着任時にはニューデリーの陽性率は毎日0.1%未満とすっかり落ち着いている状況でした。他方、毎年10?11月は「ディワリ(Diwali)」と呼ばれるヒンドゥー教のお祝いの時期であり、いわゆる日本の年末年始みたいな状況になり、インド国内の人の移動が大変多くなります。この時期を日本人のみならずインド人の方も大変気にしており、ディワリ(本年は11月4日)が終わってから2?3週間経過して感染者数が増えなければ、第三波は大丈夫だろう、という雰囲気でした。実際、この原稿を書いている12月14日(締切前日に書いているのがここでバレてしまいました)においても、引き続き陽性率は0.1%未満であり、落ち着いた状況ではないかと思っております。他方、11月下旬に発覚したオミクロン株の感染者も約50症例ほどインド国内で見つかっており、まだまだ予断を許さない状況です。引き続き警戒していきたいと思います。

 インドネシア(ジャカルタ)、ベトナム(ハノイ)と比較してのインド(ニューデリー)の生活で最も大きな相違点は私にとって三つあります。一つ目は、宗教上の理由で牛肉を食べることができないこと、二つ目は、日本食レストランはありますが日本との距離の関係から新鮮な海鮮類の空輸が難しく、新鮮なお刺身やお寿司がほぼ食べられないこと、そして三つ目は、ライフワークである剣道の稽古場がほとんどない、ということです。

 正直、一つ目と二つ目は慣れてしまえば問題ないのですが(写真はニューデリーのすき家から。牛丼ではなく、鳥丼です!!)、剣道はベトナムではコロナ禍前は週に7-8回稽古に参加させていただいてました。インドでは、チェンナイやムンバイといった都市にはインド人の剣道クラブがあるとのことですが、当地ではニューデリー日本人会の剣道部の活動のみでして、かつ、新型コロナウィルスの影響もあり、稽古場所であるニューデリー日本人学校は、授業が始まっているのですが外部の方への開放がまだされていない状況です。そのため、日々、少しでもと家で素振りをしております。ただ、やはり道着・袴を着て、防具を着けないと剣道をした気にならないため、最近は家の中で着替えての1人稽古に粛々と取り組んでいます。他方、これまでインドネシア、ベトナムではそれまでに駐在されていた先生方がゼロから剣道の普及に取り組まれてきたことを考えると、これからはニューデリーのインドの方に剣道を知っていただく、取り組んでいただく、ということが重要な私のミッションではないかと考えるに至っております。自分へのコミットメントの意味も込めて、任期中にどこまで出来るか分かりませんが、剣道を通じた日本の普及に取り組んでいきたいと思います。

 新型コロナウィルスの流行が始まってから2年が経とうとしていますが、本当に世界の価値観がガラっと変わったことを心から実感しています。同時に、新しいことは何か強制的に状況が変わらない限り、普及しない(例:在宅ワーク等)というのも証明されたと思います。

 こうした時代や環境の変化を、三カ国目のインドでの生活を通じて、しっかりと感じながら、一歩一歩前に進んでいきたいと思います。

メンバーズコラム一覧

このページの先頭へ

Copyright (C) 2021 Kansai Network System. All Rights Reserved.
〒564-8680 大阪府吹田市山手町3-3-35 関西大学商学部 西村研究室内

会員規則 これまでの歩み