2021年10月27日(水) Vol.582 美濃地研一(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)

疑似2地域居住(リモートワーク)で感じる、二つの世界

ご覧いただいているみなさま、リアルでのイベントに全く参加できていないので、本当にご無沙汰しております。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの美濃地研一です。

コロナ禍は多くの悲劇を生んでいると思いますが、その一方で、新しい生活スタイルを生むきっかけになっていることも事実だと思います。それを実感する出来事が私自身にも起こっているので、ご紹介したいと思います。

島根県益田市の実家に暮らす高齢の両親の日常生活動作が怪しくなってきたため、今年の春からちょくちょく実家からのリモートワークを実施しています。
通学可能なエリアに大学がない地域(今は1時間ほど離れたところに県立大学ができましたが)であるため、高校卒業後、進学する場合は、実家を離れることが当たり前となっていました。サラリーマン家庭でもあった私の場合は、実家を継ぐといった理由もないので、「おそらく、もう二度と実家で暮らすことはない」という悲壮な決意というか、ややセンチメンタルな想いとともに、関西の大学に進学し、その後、大阪の会社に就職し、現在に至っているわけです。

美濃地研一

ところが、コロナ禍によって、非接触が推奨されるようになりました。勤務先では、もともとリモートワーク可能な設備や社内の仕組み・制度を整えてられていましたが、クライアント(私の場合は、主に行政機関)も、リモートでの打合せが認められるようになってきました。

そこで、島根県の実家に帰省し、両親の世話もしながら、日中はいつもどおり仕事をこなすという「疑似2地域居住的リモートワーク」のスタイルを実践することになりました。

大学進学時の30数年前には、想像もできなかった、仕事と実家での両親の世話の両立が、期せずして実現しました。コロナ禍によって、社会が大きく変化したことを実感させられる出来事でした。

しかし、過疎発祥の地でもある、島根県益田市に暮らしてみると、普段生活している大阪では体感できないことも随分とあります。

例えば、CATVの地域チャンネルの放送が内容もずいぶんと違います。地元CATV局制作の番組は、高齢者向け番組が大半です。新聞折込広告は地元スーパーや全国チェーンのものはありますが、枚数は少なく、民間企業による経済活動が低調であることがうかがえます。さらに、大きく違うのが、ポスティング広告です。大阪府内の自宅には、処分に困るほどポスティング広告が投げ込まれますが、実家では回覧板くらいしか来ません。特に大きく違うのが、折込広告もポスティングも含めて、実家では不動産広告が一切ないことです。

実家周辺での空き家の増加や商店街のシャッター街化は、目の当たりにしているのですが、人口構成の高齢化や経済活動の低迷を別の側面で、突きつけられているように感じました。

シンクタンクに勤務している身でもありますし、そもそもシンクタンクに勤務しようと思ったきっかけも、「過疎や高齢化に直面する地域をどうにかできないものか」ということでしたので、恩返しも含めて、少し政策的な側面から取り組むべきことをお伝えしたいと思います。

少し大きな視点の話になりますが、コロナ禍によって、グローバルサプライチェーンが危機に陥ったことは、ずいぶん報道されましたし、マスクが不足したのも、中国からの輸入がままならなくなったため、といったことで、鮮明に記憶されている方もいるのではないでしょうか。
コロナ禍による影響だけではありませんが、経済安全保障といった切り口からも、国内での自給率を高めていくことの重要性が、従来に比べて強く主張されるようになったと思います。コストは上昇しても、許容するべきではないかというところまで踏み込んで語られるようになったと思います。

これは、国レベルのことだけではなく、より狭い範囲の地域においても必要とされる考えではないかと思います。地域経済学で用いられる「地域経済循環分析」という手法があります。、市町村を1つの国のように見たてて、域内・域外との収支を分析し、地域の強みや弱みを明らかにすることができます。例えば、私の実家のような過疎地域では、最大の収入減は、国からの年金や地元自治体への交付金といったことになるわけです。外部からの「仕送り」に依存しており、仕送りが止まった瞬間に破綻する構造となっています。

この状態を少しでも変え、持続可能性を高めていくには、地域内での自給率をあげていく必要があります。「地産地消」を実践するということです。わかりやすい例として挙げられるのは、食料品の購入する際の行動でしょう。地元の野菜、お魚、加工品を地元資本のお店で買う、というだけで、外部へ流出していた資金が地元にとどまり、地元企業の利益、従業者への給与、地元自治体の税収といった形で、地域経済に還元されていきます。
もちろん、ガソリンのように海外から輸入しなければならない商品、地元で生産していいない電化製品や衣類などもあるので、地産地消と言っても、消費者としてできることには限界がありますが、自給率を高めるという意識をもって、コスト優先だけではない暮らしをすることで、地域の持続可能性はわずかながらでも高まるのです。

疑似2地域居住(リモートワーク)で、2つの世界に身を置くことができ、地域の持続可能性が改めて考えることができました。コロナ禍による不便はたくさんありますが、この危機をバネにして、さまざまな地域の持続可能性が高まることを祈っています。私自身も自らの生活や行動が変える大きな気づきを得ることができたことは、コロナ禍で見つけたわずかな希望の光でもあります。

写真は、広島?益田間を結ぶ、高速バスの休憩スポット道の駅「匹見峡」からののどかな風景
(島根県益田市匹見町道川:道の駅 公式ホームページ 全国「道の駅」連絡会 (michi-no-eki.jp)

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