2021年10月06日(水) Vol.579 村瀬幸一(大阪職業訓練センター(A’ワーク創造館))

転職してから初めて知った、第二のセーフティーネット

みなさまこんにちは。村瀬 幸一と申します。
初めて寄稿させていただきます。
2021年5月、51歳で転職しました。
一般企業から、NGO法人の様な行政と非常に密接な機関への転職です。
これまで、勤務してきた業界や業務とは全く関係がないところにキャリアチェンジしました。
蓄積された専門知識はほぼ使えませんが、新しい出会いや出来事にドキドキ、ワクワクしながら中々刺激的な業務に取り組んでいます。
今、私が取り組んでいる業務は、「生活困窮者自立支援法」に基づく「就労訓練事業」と言うものです。
◎「生活困窮者自立支援法」について
この「生活困窮者自立支援法」。私は転職するまで全く存在を知りませんでした。
一昨年、キャリアコンサルタントの資格を取りましたが、テキストを読み返しても掲載はされているけれども、試験には全く触れられず、読み飛ばしていました。
「生活困窮者自立支援法」こそが、2015年に施行された第二のセーフティーネットです。

村瀬幸一

従来のセーフティネットは2層しかありませんでした。
1層目は、皆さんよくご存知の「社会保険制度」や「労働保険制度」です。
このネットから溢れてしまうと、次は「生活保護制度」しかありませんでした。

この制度の見直しのきっかけは、リーマンショック後2008年年末の「年越し派遣村」と言われています。
派遣勤務を突然打ち切られ、仕事と共に住宅もいきなり無くしてしまうと言う事態が多く発生してしまいました。これは、小泉改革の影響と無関係ではありません。
事態を重く見た政府は、生活保護制度の見直しとともに、新制度を作りました。
これが「生活困窮者自立支援法」です。

生活困窮者と聞くと、ホームレスや生活保護受給者のことを連想するかもしれません。
しかし、この制度て?はもっと幅広く、そしてさまさ?まな原因により生活か?苦しく、近い将来さらなる貧困に陥るおそれのある人を「生活困窮者」としています。 その数は国内に約40万人と推定されています。

「生活困窮者自立支援法」の事業は6つ。

・自立相談支援事業…支援プランを作ります。
・住居確保給付金の支給…家賃相当額を支給します。
・就労準備支援事業…社会、就労への第一歩。
・就労訓練事業…柔軟な働き方による就労の場の提供。
・家計改善支援事業…家計の立て直しをアドバイス。
・生活困窮世帯の子どもの学習・生活支援事業…子どもの明るい未来をサポート。
・一時生活支援事業…住居のない方に衣食住を提供します。
実施主体は、福祉事務所を設置する自治体で、自立相談支援事業と住居確保給付金の支給は必須事業で、その他は任意事業となっています。
コロナ禍で相談者が増えており、特に「住居確保給付金の支給」の利用が急増しています。

このうち、私が担当しているのは「就労訓練事業」(大阪市では「就労チャレンジ事業」といいます)です。
ここからは、「就労訓練事業」について述べます。

◎「就労訓練事業」利用者について
どのような方が利用されているかというと、
・長期間ひきこもりで就労経験が少ない方
・発達凸凹でこれまで周りとコミュニケーションが取れず、生きづらさを感じておられる方
・会社の倒産が続き、精神的に追い込まれ10年ブランクがあった方
・職場になし?めす?、短期離職を繰り返してしまう方
・頑張りすき?て?、結果的に仕事か?長続きしない方 などなど
一つ一つがドラマか映画になるような人生を歩まれている方ばかり。
自分のせいだけではなく、家庭環境や職場環境によって左右されてしまった方。
決して「自己責任」という言葉では解決されない方々ばかりなのです。

◎「就労訓練事業」認定訓練事業所とお仕事内容について
私が担当する大阪市では、約100ヶ所のご登録をいただいています。
・社会福祉法人 介護施設や救護施設
・ビルメンテナンス 清掃現場
が大半です。
厚生労働省からは「在宅での訓練事業所の開拓」という宿題を出していただいていますが、業務内容や訓練の確認など、クリアしなければならないことも多く、現実にはなかなか進んでいないのが実情です。
また一般企業に説明をさせていただいても、ご理解いただけなかったり、受け入れる自身がない、やってもらう仕事がないなど、なかなか認定訓練事業所への登録までたどり着きません。

私は、利用される方のこれからのキャリアのためにも、職業の選択肢を増やさなければならないと思っています。
大阪市や大阪府の事業所の方で、協力しても良いと言われる方は、ぜひご一報ください。

◎この制度の特徴とメリット
少しの環境整備や周りの理解があれば、人間は立派に働けるようになるのです。
訓練を初めて、途中で介護の資格取得を目指され、見事に資格を取得されたや、
この制度を活用して、訓練先で正社員として雇用されたケースもありました。
あるいは、やはり障がいがあることがわかり、療育手帳を取得され就労継続支援施設を
活用されるケースもあります。
利用された方が、これからの人生、キャリアの重要な分岐点になっていることがわかります。

また、事業所にとってもこの制度を使うことにより、事前に訓練という試用期間を経て採用となりますので、業務マッチングがとりやすく、従来のハローワークや求人会社だけではない第三の人材確保のルートができる可能性があります。
といっても、訓練を実施したからといって、必ずしも雇用しなければならないというわけでもありませんし、利用者も必ずそこで働かなくても構いません。つまり、お互いに使い勝手がいい仕組みとも言えます。
まだ、実施されてから7年目の若い制度ですが、アフターコロナにおいて、ますます必要性が感じられる制度と思っています。

◎最後に
一般企業からこのような業態に転職して痛感しているのは、行政と福祉と経済のお互いの壁。
それは、ガラス張りになってはいますが、お互いの声が中々届かずお互いの立場だけで進めてしまうと、絶対にうまくいかないと言うこと。
お互いが少しずつ譲り合って、少しだけ歩調を合わせていけばうまく行くのに、と思っています。

そういったことでも、このKNSの活動は非常に貴重ですし、社会的に大変価値のある活動体だと思っています。
今後とも、末長くよろしくお願い申し上げます。

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