2020年07月01日(水) Vol.515 梅村仁(大阪経済大学中小企業・経営研究所)

気づきと学びのまち・米国オレゴン州ポートランド

2019年9月、オレゴン州ポートランドを視察した。ポートランド州立大学の皆様にお世話になり、まちづくりプログラムにも参加させていただいた。2020年度も視察予定であったが、コロナの感染拡大により中止となってしまったことは大変残念である。
米国オレゴン州ポートランドは、アメリカ西海岸に位置するオレゴン州最大の都市である。「全米で最も住んでみたい都市」「全米で最も環境に優しい都市」「最も自転車で移動しやすいアメリカの大都市」「全米で最もおいしいレストランが集まる都市」など、環境に配慮した創造的な都市として注目され、人口が増加している。視察の過程で、ポートランド州立大学のコミュニティ・ベースド・ラーニング(以下、「CBL」とする)のプログラムを2日間体験するとともに、ポートランド市役所、在ポートランド日本国領事事務所などを訪問し、世界から注目されるまちの都市政策を聞き取り調査するフィールドワークを行った。今回は、実際のまちをキャンパスとして参加者の「気づき」を促すことによる学びを進めるポートランド州立大学のCBLプログラムの概要をKNSコラムにて紹介したい(今回の投稿で3回目となる)。

ポートランド舞台芸術センター前にて

初日のプログラムは、「コミュニティ(Community)」とはなにか、「Citizen(市民)」とはなにかについてグループに分かれて意見交換し発表する。例えば市民という言葉は「そこに住む人」「まちづくりに参加する人」「行政サービスを受ける人」など、様々に解釈される余地がある。このように、概念についてしっかり考え、言葉が示す意味に敏感になり、観察する意識を高めたのち、まちに出かけて実地調査した。まちに出ると参加者たちはキーワードの写真を撮影し、共通のインスタグラムに写真とコメントをアップするように指示される。まちのなかの「自然(Nature)」、「持続可能性(Sustainability)」、「環境(Ecology)」などのように、参加者はキーワードを表象する場面をスマートフォンで撮影して共有する。こうして、ポートランドのまちの風景が概念によって「分解」され整理されていく過程はとても面白く、それぞれの発想が活性化されていくように見えた。また、それぞれの参加者が個人として異なる見解をもっても良いことは多様性の観点から当然となる。
2日目のプログラムでは、初日に「分解」した様々な要素を使って、どのようにすれば良いまちをつくれるかを議論する。このプロセスはパン作りにたとえられていた。おいしいパンを作るには何が必要か。小麦粉、水、イースト菌、塩、砂糖、卵などが材料になりますが、それをどのように組み合せるのか。単純にまぜあわせればいいのか、熱を加える必要があるのではないかといったように、様々な要素を今度は統合する「仕組み(System)」あるいは「条件(Condition)」が必要になる。最後に、ポートランドを持続可能な都市にするためには、どのような仕組みや条件が必要かを参加者は議論する。
紙幅が限られていることから以上のような説明にとどまるが、このようなポートランドCBLの参加者が主体的に学ぼうとするプログラム設計を大変興味深く感じた。概念を大切にし、現実社会の観察から読み取る手続を徹底する学び方は、学生が将来社会に出て問題解決を求められる場において武器となるスキルになるのではないかと思う次第である。また、この他にはポートランド市産業局を訪問し、地域産業政策についてレクチャーをいただいた。驚くことに街のイメージとは違うものづくりに特化した一面も垣間見られ、ますますこのまちに強い興味を持つようになった(尼崎市と産業構造が似ている!)。帰国後、ポートランド市関係者がJapanとの交流事業のために来日されたので、尼崎市の産業政策のレクチャーととものづくり企業視察をアテンドして、たくさん意見交換をした。このことによりさらに私の探究心に火がついていたのは言うまでもない。近いうちに在外研究のチャンスがある、腰を据えてポートランドのものづくりを研究することが今の私の強い願いである。

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