2020年05月13日(水) Vol.508 北嶋修(北嶋事務所 九州・沖縄支部世話人)

コロナウィルス対策から見る台湾と日本の文化の違い

このゴールデンウィークはいかがお過ごしになられたでしょうか?
新型コロナウィルスの影響で、「観光立県」の沖縄は大変なことになっています。

■沖縄の状況
昨年(2019年 暦年)に沖縄県を訪れた観光客数は、1,016万3,900人で過去最高でした。内訳は723万3,900人(71%)が国内から、293万人(29%)が国外からとなっています。これらの観光客が沖縄県内で消費することによる経済効果は年間7,300億円以上になります。

ところが、今年は新型コロナウィルスの影響により、3月の状況では昨年同月には88万4,000人だった観光客数が39万6,300人と55%の減になり、消費額では実に356億円以上の減となります。

誰もいないゴールデンウィークの国際通り

そのうち、外国客は昨年同月の22万6,600人からわずか2,400人にまで落ち込み、実に99%減となってしまいました。これは、国際航空路線が3月には運休となったこと、クルーズ船が寄港しなくなったことが原因です。

そのため、外国客に人気のあった店が最初に打撃を受けました。次に国内移動の自粛で国内客向けの店も閉店してしまいました。さらに沖縄県民も外出を控え、住宅地近隣の大型ショッピングモールでもテナントはほぼ全てが閉店しています。

■なぜ台湾は防疫に成功したのか?
さて、沖縄のお隣の台湾が新型コロナウィルスの防疫に成功しているのは、皆さんもご存知のとおりです。その理由は、次の4点だと思われます。
1. 情報のキャッチアップが速かったこと
台湾は、政府も国民も中国の事にはとにかく敏感です。言語の壁もないことから、様々な情報がリアルタイムかつダイレクトに入ってきます。
私も昨年の12月、まだ日本のニュースでも大きく取り上げていなかった時点で、桃園空港で「武漢に行った方はお申し出下さい」との貼紙があったことを覚えています。

2. 国の統制が効いたこと
2003年のSARSウィルス流行で、台湾社会は大きな混乱に陥りました。その時の執政党は現在の民進党でした。このような時には、一部の業者がマスクなどの医療用品を買い占めたり高値で売ったりと、混乱時によくある行為が見られます。
今回は台湾政府はいち速く統制を行い、これらの行為を防止しました。そのため、国民は1枚5元(約18円)の安定した価格でマスクを買うことができます。

3. 専門家が指揮を執っていること
台湾政府は新型コロナウィルスの世界での流行が今年1月に中央流行疫情指揮中心(中央流行伝染病指揮センター)を設置し、医師出身の陳時中氏を指揮官に任命しました。
また、IT技術の専門家である唐鳳(オードリー・タン)氏が2016年に政務委員(大臣)に就任するなど、国政の中枢に専門家を積極的に登用しています。

4.ITテクノロジーを駆使していること
前述の唐鳳氏が民間のIT技術者たちに働きかけ、2月にはマスクの在庫をインターネット上で確認できるマップを公開したことは有名です。
その後もマスク購買システムは進化し続け、現在は健康保険証でマスクが買える自動販売機や、コンビニに設置されている情報端末でマスクの予約購買ができる「マスク実名購買制3.0」が実施されています。

■なぜ台湾と日本は「違い」が出るのか?
なぜ台湾と日本では新型コロナウィルス対策に、このような「違い」が出たのでしょうか?
日本では好調だったインバウンド観光や、本来ならこの夏開催される予定だったオリンピックに配慮し過ぎて初動が遅かったのかも知れません。

ここからは「良い」「悪い」の話ではありません。「文化の違い」の話です。

1. 意思決定の速さ
台湾で仕事をしているとわかるのですが、台湾企業は日本企業に比べると意思決定がとにかく速い。台湾企業の商談は「必ずその場で決める」ことを目標としています。
台湾企業での意思決定のあり方には、「トップの意思決定力が強いパターン」と「現場の意思決定権が強いパターン」の2つがあるように見えます。
台湾での新型コロナウィルス対策にも「トップ(政府)」と「現場(中央流行疫情指揮センター)」による意思決定の速さが奏功していると考えられます。

2. 結果にこだわり、プロセスにこだわらない
なぜ、このような違いが生まれるのでしょうか?
一つには、台湾では結果を重視して動き、プロセスはあまり問題にしない。日本では結果も求めるが、それ以上にプロセスが重視されるという違いがあります。

3. 日本は問題発生を恐れ、台湾は機会損失を恐れる
その理由は、日本が「問題発生」を恐れる「超調整社会」であることだと言えます。良く言えば全ての利害関係者に配慮しており、悪く言えば彼らとの衝突による問題発生を極度に恐れるのです。そのため、日本の対応はどうしても時間がかかるのです。

これに対して、台湾は「機会逸失」を恐れるのです。だから結果を重視するのです。プロセスにこだわっていると機会を逃してしまいます。これが前述の意思決定速度や、ITテクノロジーの活用などの違いを生み出すと考えられます。

これは日本と台湾のビジネス文化の違いにも現れます。日本企業は関係者と十分調整した上でルールを決め、仕組みを作ることが得意です。だから遅いのです。台湾企業はチャンスを掴んで売り抜けるビジネスが上手です。だから速いのです。

4. フラットでコンパクトな社会
台湾の社会はフラットです。年齢差や男女の区別が日本や韓国ほど強くはありません。そのため、日本に比べると、お互い対等に言いたいことを言い合える雰囲気があります。
また、九州ほどの面積しかない国土で社会がコンパクトであることも、今回の対策の強みになったと考えられます。仮に日本で台湾と同じようなシステムを導入しようとすれば、莫大な予算と期間が必要になるかも知れません。

■さらに大切なこと
前述の唐鳳氏は、「台湾の新型コロナウィルス対策の成功の鍵は、政府と国民の相互信頼にある」としています。
「一つ目には、国民が政府を信頼しており、国民が公共の場において疫病について自由に議論できること。二つ目には政府が国民を信頼しており、国民が警告を真剣に受け止めることができると考えていること。このような政府と国民の相互信頼は、台湾がオープンな社会であることに極めて大きな関連がある。」
また、唐鳳氏は「台湾の成功は、『社会全体』の考えに基づき、政府が命令に従うよう人々に命じたことではなく、国民がお互いに防疫措置を守るよう注意を喚起しているのだ」と協調しています。

台湾における今回の新型コロナウィルス対策は、オープンかつフラットで相互信頼のある社会が、公共の福利を実現した事例かも知れません。これは「コミュニティ」の一つの理想でもあるでしょう。

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