2020年04月22日(水) Vol.507 平山知明(神戸市)

春望

KNS世話人の一人の平山です。巷では、新型コロナウィルス感染症の影響で全国に緊急事態宣言が出され、先行きが見えにくい状況になっていますが、皆さまいかがお過ごしですか。
さて、こちらのコラムへの登場は、5回目で久しぶりになります。先週のコラムでは、領家さんが新たな門出についてご報告されていましたが、実は私も今回のコラムで新たな門出についてお話しする予定でした。2019年9月に奈良女子大で開催された第66回定例会の二次会に参加された方は、ご存知かもしれませんが、その席で独立を宣言しております。
不肖私について、KNSが本職のように思われている方も多いと思いますが、これでも30年余り役人人生を何とか送ってきております。その内、気が付けば半分以上をKNSに関わってきているので、KNSの方が本職と言われてもあながち間違いではないかなとも思ったりしています。
私が、独立を考えるようになったのは、KNSを通じて多くの方々に出会いやご縁をいただき、気付きや勇気、熱い想いなどを本当に数多く分けていただき、気が付けば、自分自身もこれからの残りの人生を通して産業振興や地域振興に関わるとともに、そうした想いに関連する事業を興せないかと思うようになったためです。

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いわゆる本業の方では、税金以外のほぼ全分野に関わる様々な業務を経験してきましたが、当然のこととは言え「宮仕えの身」の限界や組織の論理や制約といったものがあり(あえて事の詳細は省略させていただきますが。)、在職しながら、自分の想いを形にしていくのは難しいと感じたためでもあります。
しかしながら、諸般の事情により(COVID-19の影響が主たる原因ではありません。)、実際に独立するのを少し延期することにしたのですが(前言撤回した訳ではないので、根性なしと言わないでいただければ幸いです。)、皆さまには、引き続き色々とお話しをお聞きさせていただきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
前置きが長くなってしまいましたが、今回は別のお話をさせていただこうと思います。
やはり、時期的なこともあり、新型コロナウィルス感染症関連の雑談をさせていただきますね。とは言うものの、ウィルス学や感染症の専門家ではないので、専門的・科学的な情報が提供できる訳でないことだけはご了承下さい。
 実は、全く同じではないのですが、我々の先人は似たような経験をしていたようです。丁度、約100年前の1918年から20年にかけて世界中で猛威をふるったスペイン・インフルエンザという感染症がありました。主として日本におけるその流行の状況、予防、病理等をつぶさに記録した貴重な調査報告書が出版されており、誰でも簡単に読むことができます。それは、大正10年12月に内務省衛生局より発行された「流行性感冒」という本です。原本もpdf形式ですが 分割ダウンロード可能ですし、平凡社から東洋文庫(このシリーズは、本邦、洋の東西を問わず入手困難な古典籍を日本語訳で読めるのでお勧めです。)の1冊として2008年に復刻もされています。
 この本は、感染症の流行の収束後直ぐにまとめられたものですが、現在と異なりインターネットや高性能P Cなどの無かった大正時代の中期に欧米の感染状況や対策についても詳細に情報を収集・整理し、後世に遺してくれたことは、明治人の面目躍如と言ったところでしょうか。
 本の中味を見てみると、パンデミック(この本では「パンデミー」と記載されています。)の原因となったウィルスは異なるものの、当時の状況と現在の取り組みはかなりの程度酷似しているように思われます。当時の伝染経路の遮断対策として、(1)飛沫伝染の防止のための「マスク使用の奨励」、(2)流行性感冒患者と他の一般患者との隔離や工場等通勤者における罹患者や罹患の疑いのある者が出た場合の相当期間の就業の差し控え等を内容とする「患者の隔離」、(3)昇校停止や学校閉鎖、劇場・寄席・活動写真館等の興行見合わせなどを内容とする「集会・集合の制限」、(4)患者使用物・居室等の消毒やホテル・飲食店・料理店等における消毒などを内容とする「消毒」、(5)外出後、食事の前後、就眠前の嗽を内容とする「含嗽」が取り上げられており、現在の我々の周りで実施されている対策と殆ど変わらないことに驚くばかりです。
また、適度の運動の奨励や妊婦・産婦への配慮、他衆集合の場所への立入りの差し控え、散歩の奨励などを内容とする「一般衛生」や医療チームの臨時組織の編成や官公市立病院の収容力増加、公会堂・寺院等の建物の臨時収容所としての利用、薬品等の製造能力の増進、買占・売惜等への取締り、更には予防・治療に困難を感ずる者に対する相当の援助救済の実施などを内容とする「医療・看護等」についても現在とほぼ変わらない、あるいはそれ以上の取り組みが行われていたようです。
ただ、この時期の新聞のアーカイブをネット上で見てみると、マスクの買占め・入手困難、予防法や予防薬に関する流言飛語の類なども起きており、所謂3密を避けることを喧伝しながら、実際には記念式典が挙行されたり、通勤時の人混み・満員電車の解消には至らないなど、人の営みは余り変わらないのかもしれないと思ってしまいます。
 今回の事態が100年前と全く同じ道筋を辿ることはないと思いますが、流行性感冒は3回の波が我が国を襲い、多くの方が犠牲になられています。3回目の波が襲った後は、何が効いたのかは分からないのですが、全世界的に収束してしまったというのが約100年前の結果だったようです。
 我々も先人の遺訓を元に、今回のCOVID-19について、少し収束したからもう安心だとは思わず、気を引き締める必要があるように思います。今回も、残念ながら少しばかり長期戦になるのは避けられないのかもしれません。(人と人との繋がりを重視するKNS的には、極めて影響が大きく、受け入れ難いことではありますが、ここはじっと我慢の雌伏の時期と捉えましょう。)
 一方で、このウィルスとの戦いにも終期はきっと来るので、その次を見据えた取り組み(今回の経験を通じて、物事に対する視点が今一度見直されるのではないかと思います。)の準備をしておかねばならないと肝に銘じるばかりです。
 最後に、今年はCOVID-19騒ぎのため、春のお彼岸も桜の花の盛りも気が付けば終わってしまい、季節感を感ずることが出来なかったのが誠に残念かつ興覚めの感が否めないところですが、杜甫の「春望」(ある年齢以上の方は、高校の漢文の授業で習いましたね。)でこの項を締めたいと思います。
国破れて山河在り
城春にして草木深し
時に感じては花にも涙を灌ぎ
別れを恨んでは鳥にも心を驚かす
烽火三月に連なり
家書万金に抵たる
白頭掻けば更に短く
渾べて簪に勝へざらんと欲す

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