2020年02月12日(水) Vol.497 今井潤(岩手大学 三陸復興・地域創生推進機構)

大学生による地域課題解決の取組み

 KNS 東北支部世話人の今井です。 
 今回は、仕事として岩手大学で実施している「大学生による地域課題解決の取組みを紹介させていただきます。
 それは、平成18年のことでした。 
 平成16年から国立大学法人化され、6年ごとの中期計画を立てて、目標・計画の達成状況を毎年チェックしながら進めるようになっていました。大学で産学官連携を担当する地域連携推進センターで、中期目標・計画を見ていたところ、
「産学官連携の推進に関する具体的方策」として、「地域社会から卒論・修論のテーマを募集する」との文言を見つけました。

盛岡さんさ踊り 笑顔の街角プロジェクト(2013)

 「これって誰がやるの??」 という第一印象でした。大学ではよくあることなのですが、この計画も担当者が誰だかわからない状況でした。 いろいろと調べてみると、工学部のWEB上に、「ホームページでの卒論・修論のテーマ募集  国民の皆様へ・・・・」というちょっと冗談のような告知がありました。それ以下の文章も、問題がなければ採用してあげる というようなトーンで、残念ながら誰も応募したくなくなるようなものでした。
 このままでは、マズイ!ということで、地域連携推進センターで議論を始めました。実際、工学部では、INSでの地域企業とのつながりにより、当時からニーズプル型の共同研究(卒論・修論)をかなり多数実施していたので、特に理工系のテーマを地域から募集する必要はないという結論になりました。地域の抱える課題を考えると社会科学系の問題が多く、連携している自治体職員に聞くと、課題があることはわかっていても、予算と人がいないので取り組めない案件が多数あることがわかりました。
 そこで、「地域課題解決プログラム」と事業名を決めて、共同研究のテーマとなりうるもの以外の分野で、岩手県内の主に自治体やNPOなどを中心に募集することにしました。1件20万円と予算を決め、当時の平山健一学長(現INS会長)と当時理事の岩渕明先生(現岩手大学学長、次期INS会長)にお願いし、学長裁量経費から200万円を毎年支出してもらうことにして、10件の募集を平成18年1月に開始しました。
 予想以上の反響があり、62件の応募があり、それらを学内に周知した結果、11件のプロジェクトが卒論等の研究テーマとしてスタートし、翌年3月には成果発表会を実施することができました。
 ただ、同じ大学教員でも文系と理系はこんなに考え方が違うかと、びっくりすることが多々ありました。例えば、理系では、研究室に配属された学生に対して、研究テーマを人数分程度用意して、その中から自分のやりたいテーマを選ぶように、卒論テーマを決定することが普通だと思います。理系教員であれば、研究室の設備とテーマの大きさなども考慮して、1年または2年である程度の成果が見込めるもの考えて、テーマを決めます。
 しかし文系の先生にこの理系のテーマ決定の話をしたところ、「とんでもない! 文系はそんな決め方はしない!!」と言われてしまいました。「文系では卒論テーマを決めることも、卒論の重要な要素なので、教員が卒論テーマについてアドバイスはできるが、あくまで考えて決めるのは学生だ」 ということで、最初の頃はなかなか担当学生が決まらないというトラブルも多発しましたが、現在ではスムーズに進むようになりました。
 当初の目論見の通り、文系の研究者が大学生を連れて様々な地域課題に取り組むようになり、大学の社会連携を代表する大きな取り組みになりました。特に東日本大震災・津波の発災後は、今まで様々な形でつながってきた地域の人たちとこれらの研究者が様々な復興の取り組みを進めており、このような取り組みの重要性を再認識しました。
 数年前からCOC+(文部科学省地(知)の拠点大学による地方創生推進事業)の事業にも組み込まれ、年間30件(予算600万円)の取り組みになり、大きくはないものの多彩な成果を上げるようになりました。
 次の写真に示すのは、平成22年から始まった「盛岡さんさ踊り 笑顔の街角プロジェクト」の取り組みです。盛岡商工会議所からの依頼で、盛岡の夏祭りのさんさ踊りに向けて、お祭り気分を盛り上げるような企画を大学生と取り組みたいということで始まり、SNS上で情報発信や、カウントダウン、また街角に、「お祭り楽しみ!」というみんなの笑顔や最近はイケメンお祭り男子のポスターを貼ることで、とても盛り上がるようになり、大学から商工会議所の事業になり、今も続いています。(写真左下に、私と娘もいます) 
 岩手大学では、ものづくりエンジニアリングファクトリー、いわてキボウスター開拓塾、 NEXTSTEP工房など、大学生が地域と関わる様々なプロジェクトが進められていますが、それらは、全て正課外の取り組みで単位にはならないものです。社会から求められている人材が大きく変化している時代に、大学教育も大きく変わろうとはしていますが、まだ十分ではないと考えています。
 たかだか1件年間20万円ぐらいのleanなプロジェクトで、失敗してもいいから、自分でも地域や社会を変えられるかもという体験をした大学生を、すこしでも多く排出することが、これからの地方大学の大きなミッションではないかと思って、努力を続けたいと思います。

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