2019年07月31日(水) Vol.471 松田きこ(株式会社ウエストプラン)

ハワイ島、マウナ・ケアの山頂へ

大小約132の島からなるハワイ諸島で一番大きな、ハワイ島。ここには5つの火山があって、活火山はマウナ・ロアとキラウエア、休火山はマウナ・ケアとフアラーライ、死火山がコハラだ。2018年5月3日、キラウエアの大噴火は記憶に新しい。今回のボルケーノ(噴火口)は、多くの人が住む住宅地だった。避難が順調に進んだおかげで人への被害はなかったそうだが、溶岩はゆっくりと町を飲み込んでいった。
私が訪れたのは2019年4月。1年経っても大地は熱をもち、立入禁止の立て札の奥では煙がくすぶっている所もあった。圧倒的な自然の力をまざまざと見せつけられ、多くの住民が慣れ親しんだ家を離れなければならなかったことを思うと胸が痛む。しかし、避難せずに自己責任で危険な自宅に住んでいる人がいれば、「溶岩に一番近いゲストハウス」として、新たにビジネスを始めた家もある。たくましいかぎりだが、保険に入れないほど危険なエリアなのに大丈夫なんだろうかと心配になる。

松田きこ

少し車を走らせて、今回の噴火でできた新しいビーチへ。一面黒い岩と黒い砂、ブラックサンドビーチだ。砂を手にとってよく見ると緑色に光る粒がある。これは宝石のペリドット。持ち出すことはできないが、きらきら輝く砂を探すのは楽しい。しかし、高波が黒い岩にぶつかって飛沫をあげる様子は、まるで冬の日本海のよう。青い空と海、白い砂浜を想像していたが、ハワイ島はずいぶん違った。特に滞在したヒロは、雨が多く、冬には高い山に雪が積もるのだ。

今回、私たちは冬もののジャケットをもってきている。なぜなら、富士山より高い海抜4,205メートルのマウナ・ケアに登るから。ハワイの言葉でマウナは山、ケアは白。9月に初冠雪、それから2月まで山の中腹まで雪が積もり、とけるのは4月だ。
「昨日も雪が降っていたよ」というのは、泊まっているB&B「「ゲストハウス・イン・ヒロ」のご主人、黒島健司さん。山頂まで車で案内してくれるのも彼だ。そう、歩いて登るなんてしんどいことはできない私は、頂上まで車で行けると知って決めた旅なのだ。
富士山より高い山に登るのがどんなものなのか、高山病は大丈夫なんだろうか、しかも車だから短時間で4000メートルも上がることになる。一抹の不安があったが、ベテランの黒島さんの説明を聞いて少しほっとする。

いざ当日、まず2000メートルの場所で軽食をとって40分ほど休憩。体を徐々に高地に慣らすためと、胃袋を動かして血中の酸素を消費させて新たに酸素の豊富な血液を作る目的だ。道路から見えるマウナ・ケアの山頂部には薄く雲がかかってとてもきれい。頂上からどんな景色が見えるのか、わくわくしてきた。
そしてまた車は走り2800メートルのオニヅカビジターセンターへ。売店で土産物を見たり注意事項を確認する。それほど空気が薄いとは感じないが、このあたりが富士山の七合目にあたる。30分ほど休憩したら、いよいよ山頂に向かう。この先は四輪駆動車しか進めない決まりだ。車は荒れた道をゆっくりと走る。徐々に空気が薄くなってくるので、意識して酸素を吸い込む。

車が止まったのは天体観測施設のある頂上付近。天候が安定しているため、世界11カ国13基の天文台があり、日本の国立天文台のすばる望遠鏡もここにある。そろりそろりと大地を踏みしめる。高度4200メートルの空気は冷たく、火山の大地は温かい。あたりは鳥の声が聞こえるだけの静けさ……。なんと心地良い場所なんだろう。ハワイの人々が信仰する、火の女神ペレの棲む山、荘厳な空気に包まれたような気がした。

海外に行くと飲みすぎ食べ過ぎで体調を崩すことがあるが、ハワイでは体が軽く、むしろ元気になったかもしれない。美しい自然、ゆったりと過ごした時間などの理由のほかに、食べ物の影響が大きいと思う。
B&Bの料理は黒島さんの奥さんのミッシェルさんが担当している。毎朝作ってくれる朝ごはんがいいのだ。具だくさんのスープは、日によって味噌風味だったり、麹風味だったり。5種類以上の料理は野菜がたっぷりでどれもおいしい。おからのサラダ、大豆煮、車麩と野菜の炒め物ときたら、ここがどこの国かわからなくなるほどだ。私などは日本でも、おからを炊くのは年に1回もない。車麩は使ったことさえなかった。パンやフルーツ、生ジュースに淹れたてのコーヒー。わざわざ遠くまで有機野菜を買いに行き、早朝から作ってくれる朝ごはん。レシピを教えてほしいと思うものがたくさんあって、ランチ用にお弁当を作ってもらったことも。
夜もミッシェルさんの作る料理の方がいいと、後半は外食を止めた。B&Bのテラスでワインを開けて、ゆっくり美味しいものをいただく。鳥の声がすぐ近くに聞こえ、クピッというのはカエルの声、木々の香り、涼やかな風、白いビーチで泳ぐことはなかったけれど、雄大な自然ややさしい人々と出会い、想像以上の素晴らしいハワイを知ることができた。

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