2017年07月12日(水) Vol.369 廣田光政((一社)滋賀県中小企業診断士協会)

近江商人と経営管理の基本

 生まれてこの方73年間(1944年生れ)、湖国滋賀県(近江)を離れて暮らしたことが無い。生粋の滋賀県人であることに誇りを持っている。大学卒業後、半世紀を超えて滋賀県の中堅・中小企業様への支援を中心に仕事をしてきており、大変に多くの経営者や創業者の方々から面識をいただき、企業経営の知見について教えていただいた。
 ご承知のとおり、滋賀県は近江商人の発祥の地であり、伊藤忠商事・丸紅、住友や西武グループ、大丸・高島屋、東レ、ワコール、日生、ニチレイ、武田薬品等この紙面に記載できない程数多くの多様な大企業の創業経営者をこの地から輩出している。この足跡を辿り、近江商人の偉業を称えて沢山の本が出版され、今も研究が続けられており、また本県の企業が掲げる経営理念には近江商人が唱える「三方良し」が挙げられ、日々の朝礼などにおいて斉唱されるところも多い。私は、こうした数多くの機会や環境に恵まれているのにも関わらず、恥ずかしながら先達の近江商人について研究し、学んだことも無い。

廣田光政

 しかし、50年以上にわたって滋賀県の経営者と接してきて(現在では、3代にわたってお付き合いさせてもらっている企業様も多い)、近江商人の先祖様からの経営基本は次の3点にあると、勝手に理解している。
1. 世間に良く知られた「三方良し」・・・「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」
2. 朝は朝星、夜は夜星・・・朝早く星を頂いて仕事に出かけ、夜は星を仰いで帰る。
3. 質素倹約・・・ケチに徹することでは無い、不要なことをするな!の意味
 これまでにお会いした経営者の方々から見聞きしたことを自己流に解釈した内容であるが、特に2番目の朝星・夜星の仕事観が私は好きである。だから、70歳を超えても夜昼構わず、休祭日(盆正月を含む)でも企業様からご要請があれば喜んで仕事を引き受けている。「1年365日、1日24時間、貴社のご都合に合わせて仕事を受託します!」これが、私のセールスポイントだ。
 ところで、最近は、起業・開業の相談も多い。よくいわれるところの小物創作等の趣味を活かしたプチ起業をはじめ、SEや各種士業資格取得者、英会話教室、デザイナーなどのフリーランサーが創業を希望される事例が多い。私の場合、相談時に、真っ先に確認するのが「売上の自信」である。私の専門分野が販売ということもあり、どれだけ実需を把握しているのか?経費を賄い、利益を出すまでの経営計算(売り先確保見込、採算確保までの年月見込等)が出来ているのか?・・・。売上確保に自信を持てるまで、相談を重ねるのが私流のコンサルテーションである。
 この相談に際し、経営の基本としてQ(品質)、C(コスト、価格)、D(納期)の実務を分かり易く説明する。Q・C・Dは、以前は製造業の生産管理基礎として重視されていたが、最近では、我々のようなサービス業やあらゆる業種にも適用できる経営管理基礎と考えられている。創業される方々には、有名な牛丼屋の看板実例として、「旨い(Q)、安い(C)、速い(D)」を引合いに出して競争の基本原則と現場実務の第一線事例を詳しく説明する。
現場の実務では、商談交渉で新規開拓に臨まれても、C(納入価格)やD(納期)は大体において発注先の「仰せの通り」が普通である。顧客開拓交渉の成否は、発注先仕様のQ(品質)に沿えるかどうかが成否の鍵となる。
 これらの経営管理基礎Q・C・Dと併せて、競争力を高めるための実践手法として業務におけるムダ・ムラ・ムリの取り除きについて丁寧に助言を行っている。いずれも目新しい経営管理や実践手法では無い。しかし、その昔、近江商人の先達も番頭や手代、丁稚どんに対してこのような経営基本・実践手法をじっくりと時間をかけて教え込んできた成果が、今日まで連綿と続いている多くの優秀企業を創り上げてきたものと確信している。

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