2016年04月06日(水) Vol.306 領家誠(大阪府商工労働部中小企業支援室経営支援課)

意識の「ずれ」

新年度をむかえ、今年は、人事異動も無く、新しいスタッフをお迎えしての幕開けとなりました。ものづくりの企業さんとの交流拠点MOBIOで仕事をしていた頃は、毎日がお祭りのような環境での仕事。昨年の久方ぶりの異動で、組織のマネジメントがメインの仕事になりました。以前の仕事とはがらりと環境も変化しました。とはいえ、現場で企業さんやそれを支援する専門家の皆さんとたくさんの交流を持つことができたことは大きな財産。今の担当の仕事も間接支援とはいえ、引き続きの中小企業支援ですので、うまく活かしていきたいと思います。

領家誠

そんな中、あらためて、立場を変えてみると支援機関各組織の現場感と企業側のニーズや環境変化・動向への認識の間に「ずれ」を感じます。これは、手法論・方法論としての「ずれ」もありますし、スピード感の「ずれ」もあります。企業を支援する側の政策や事業もイノベーションが必要だと痛感しています。
 さて、先月末、1年半ぶりにべトナムの土を踏んできました。要件は、現在、大阪府とPREX(太平洋人材交流センター)とで進めているJICA草の根技術協力事業「ベトナム国ドンナイ省におけるものづくり人材育成事業」です。今回は、教育カリキュラムを実施するモデル2校(大学と職業訓練短大)と現地に進出している日系中小企業との連携関係構築のための事業推進委員会への参画企業の開拓がミッションでした。
 現地企業と話をしていると、環境の変化に順応する企業の動きを実感します。TPPに備えて、縫製業が再びベトナムに戻ってきていることや円安の影響もあり製造業では利益が出ないため、自ら利益を求めての商社展開が増えているとのこと。この点は、統計にも表れていて、なぜかわからなかったのですが、今回の訪越で要因の一端がわかりました。イオンも4店舗目を今年夏にオープンさせるほか、ビックCやコープマートの買収にも名乗りをあげているとのこと。流通・小売系の展開もこれから加速するものと思われます。
 こうしたことを見聞きすると成長市場にあっては、業態を超えて旺盛な事業意欲が喚起されるものであり、現状の支援政策では、業種別の支援の濃淡の在り様が影響する可能性があるなあとここでも「ずれ」を感じました。
 話は、変わって、私は、昨年度後半に中小企業庁の中小企業政策研究会に委員として参加していました。中堅・中小企業であって、成長余力のある企業に対し、イノベーションや他分野展開を促し、内部留保を投資に向けさせる政策のあり方がテーマでした。
 他には、経済学や起業支援系の経営学の学識経験者、経営コンサルタント、金融機関等の皆さんが委員として参画していました。内容は、来月にはまとまるので、詳細は述べませんが、「理詰めのエビデンスを根拠にした政策で経営者は動くのか?」という点がずっと気になっていました。確かに企業は経済合理性を追求するというのもわかるのですが、心理面というかマインドの部分の影響を低く見ているというか、配慮していないような気がしてなりませんでした。
こうした施策は個人にあっては、消費喚起ですが、昨年度、全国的に実施された、いわゆる「割引事業」では、商品提供サイドの事業者が、既存取引先との関係や値引きによるブランド価値の喪失、事業後の価格への反動懸念から参加を見送る企業が散見されました。事業としては、消費者は安く買え、事業者は損することなく売り上げを伸ばせるというも。しかし、事業者側では、そういうマインドにならなかった。
 政策における誘導と受け手側の心理・マインド面の変化の「ずれ」。これをどう評価していく政策に織り込んでいくのか。まだ、答えはありませんが、一つのキーワードはJ・ジェイコブスの言う「インプロビゼーション(即興的な工夫)」が、政策においても生み出すことができるのかという点にあるように思っています。
これからの政策は、フォーマルなネットワークだけでなく、様々なインフォーマルなネットワークやボランタリーなマインドを持った専門家達との連携など重層的かつゆるやかで互いが支えあうような生態系(エコシステム)ができている場所・地域、つまり、インプロビゼーションを生んでいる関係性の中に落とし込むことが必要なのかもしれません。政策のインプロビゼーションは、そういうところにしか発生しないような気がします。
ただ、一方で、役所は組織・人員・予算の執行形態から、こうしたインプロビゼーションが超苦手。。このトレードオフの関係をどう克服していくのか。これちょっと研究してみます。

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